ビレーの朝霧が晴れる頃、ラーンとイシェはテルヘルと共に遺跡へと向かっていた。今回は、街の外れにある崩れかけた石造りの塔が目的だった。テルヘルは古い地図を指さし、慎重に説明した。「内部構造は複雑で、罠も仕掛けられている可能性が高い。特に注意すべきは、塔の最上階にある部屋だ。」
イシェは地図を眺めながら、「何か重要なものがあるのですか?」と尋ねた。テルヘルはわずかに唇を動かして答えた。「この遺跡には、ヴォルダンが探し求めているという伝説の遺物があると噂されている。」ラーンの耳がぴくっと動いた。彼はいつも通り大穴の話ばかりしていたが、今回は少し違った何かを感じていた。
塔への入り口は崩れ落ちた石 rubble の下にあった。ラーンが剣を抜き、イシェが小さなランタンを手に取り、テルヘルが後ろから様子を伺いながら慎重に中へ入った。
内部は薄暗く、湿った空気と土の臭いが漂っていた。壁には苔が生え、天井からは石が崩れ落ちそうなほど老朽化していた。彼らは一歩ずつ慎重に進み、時折聞こえる不気味な音にも緊張を隠せなかった。
「何かいるかもしれない」イシェは小声で言った。ラーンは頷きながら、剣を構えたまま周囲を見回した。テルヘルは冷静に地図を広げ、進路を確認していた。
やがて彼らは塔の中ほどにある広間に出た。そこには、巨大な石の祭壇が置かれていた。祭壇の上には、奇妙な模様が刻まれた金属製の箱があった。
「ここか」テルヘルはつぶやきながら、箱に近づこうとした。その時、床から黒い煙が立ち上り、部屋中に広がった。煙の中に不気味な影が浮かび上がり、ラーンは剣を振り下ろした。しかし、影は素早く動き、ラーンの攻撃をかわすとイシェへと襲いかかった。
イシェは咄嗟に身をかわし、ランタンを投げつけた。ランタンの火が影に飛びつき、一瞬だけその姿を照らし出した。それは、奇妙な形をした生き物だった。まるで石と溶け込んだような姿で、鋭い牙と爪を持っていた。
ラーンとイシェは協力して生き物と戦った。ラーンの力強い攻撃とイシェの機敏な動きが、影を追い詰めていった。しかし、生き物はなかなか倒れなかった。
その時、テルヘルが祭壇の上の箱を開けた。箱の中から、 blinding な光が放たれ、部屋全体を照らし出した。生き物は光に苦しみ、悲鳴を上げながら消滅した。
光が消えると、部屋は静けさを取り戻していた。ラーンとイシェは息を切らし、互いに顔を見合わせた。テルヘルは箱から何かを取り出し、満足げに笑みを浮かべた。
「これでヴォルダンへの復讐は一歩近づく」彼女は言った。しかし、ラーンの心には、どこか不安な気持ちがこびりついていた。