ビレーの酒場にはいつもより活気がなかった。ラーンがイシェに顔をしかめた。「今日は悪い予感するぜ」。イシェはいつものように冷静だった。「大穴を見つけたという噂は、結局嘘だったんだろ? そんなもの、どこにもないって、いつから言ってるのかしら」。
「おいおい、イシェ。そう簡単に諦めるなよ。いつか必ず見つけるさ。俺たちにはまだチャンスがある」ラーンはそう言ったが、彼の声には力強さが欠けていた。
その日、テルヘルはいつものように冷たい表情で彼らを待っていた。「今日は新しい遺跡の情報が入手できた。ヴォルダンとの国境付近だ」。イシェは眉をひそめた。「危険すぎるんじゃないか?」だがラーンは「よし、行こうぜ!」とばかりに目を輝かせた。
遺跡の入り口は、まるで獣の口のように広がっていた。内部は薄暗く、湿った空気が充満していた。ラーンの足音が響き渡る中、イシェは不吉な予感を拭い去ることができなかった。
深い闇の中を進んでいくと、壁一面に奇妙な模様が刻まれていた。「これは...」イシェは言葉を失った。まるで溢れるエネルギーが脈打つように見える、古代の文字だった。ラーンは興奮気味に「何か大物が見つかる予感がするぞ!」と叫んだが、イシェは背筋が凍り付く感覚を覚え始めていた。
突然、遺跡の奥から不気味な音が響き渡った。それはまるで、抑えきれない怒りが溢れ出すような音だった。ラーンの顔が歪んだ。「何だこれは...」。テルヘルは剣を抜き、警戒を強めた。「何かが近づいている」。イシェは恐怖に慄きながら、ラーンとテルヘルの後ろに隠れるようにした。
暗闇から、巨大な影がゆっくりと現れた。それは、まるで石でできた巨人のようだった。その目は燃えるような赤色に輝き、全身から溢れる悪夢のようなオーラが彼らを包み込んだ。イシェは絶望的な状況を目の当たりにし、小さな声で呟いた。「これは...終わりなのかもしれない」。