ラーンがいつものように大口を開けて笑い、「今日は必ず何か見つかるぞ!」と豪語した時、イシェは眉間に皺を寄せた。「またそんなことを言うのか。準備も何もせず、ただ漠然と遺跡に飛び込むだけだ」
「おいおい、イシェ。そんなに堅苦しくするなよ。ほら、ほら、今日はきっと大穴が見つかるって気がするんだ!」ラーンの笑顔は、イシェにはいつも通り、どこか子供っぽく思えた。だが、彼のその笑顔は、いつも通り、イシェの心を少しだけ和ませる不思議な力を持っていた。
テルヘルは二人のやり取りを静かに見守っていた。彼女は自分自身の目的のために彼らを雇ったが、彼らの無邪気さに時折心を動かされることもあった。
「準備はいいか?」テルヘルの声に、ラーンとイシェは顔を上げ、うなずいた。彼らは小さな袋に食料と水筒を詰め込み、剣を腰につけ、遺跡へと向かった。
遺跡の入り口は、まるで巨大な口を開けた獣のように見えた。その奥には、暗闇と謎が潜んでいた。ラーンは興奮した様子で一歩踏み出すと、イシェは彼の手を掴んで引き止めた。「待て。準備が不十分だ」イシェは慎重に周囲を観察し、「あの崩れた柱の影には何かいるかもしれない。罠の可能性もある」と警告した。
ラーンの顔色が少し曇ったが、テルヘルが「イシェの言う通りだ。準備を怠ると命取りになるだろう」と冷静に言ったため、彼は納得したように頷いた。