ラーンが巨大な石 puerta をこじ開けようとしていたとき、イシェは背後から「待て!」と叫んだ。ラーンの顔には、いつものように無邪気な笑みが浮かんでいたが、イシェは彼の瞳に映る、一瞬の迷いを捉えた。
「何だ?何かあったのか?」
「あの記号…見たことがある気がする」イシェは壁に刻まれた複雑な模様を指さした。「以前、古い書物で…」
ラーンの眉間に皺が寄った。「そんなことより、早く中に入らないと夜になってしまうぞ!」彼は石 puerta に再び力を込めた。
しかし、イシェは一歩も動こうとしなかった。満天の星の下、静かな夜の空気は緊張感に包まれていた。「あの書物には…この遺跡は危険だと記されていた」と彼女は静かに言った。「古代の呪い、あるいは強力な魔物の封印が解かれる可能性もある」
ラーンの表情が曇った。「そんな話、どこで聞いたんだ?」
「本当かどうかはわからない。でも、リスクを冒す必要はないんじゃないか?僕たちは…」
イシェの言葉を遮るように、後ろから低い声が響いた。「リスクと報酬は常に隣り合わせだ」テルヘルが近づき、鋭い視線で二人を見下ろした。「遺跡の調査は危険を伴う。だが、大穴という夢を実現する唯一の道でもある。それに、私は君たちには必要以上の報酬を払っているはずだ」
ラーンの顔つきが少しだけ変化した。イシェは彼の揺らぐ決意に気づき、ため息をついた。満天の星が輝き続ける夜空の下、三人は遺跡へと足を踏み入れた。背後から聞こえるテルヘルの冷たい笑いが、彼らの運命を暗示していた。