ビレーの港には、満ち潮が押し寄せるように人々が集まっていた。いつもなら活気のある市場も、今日はどこか重苦しい空気に包まれていた。ラーンはイシェの肩を軽く叩き、「今日はいい感じだな。きっと大物が見つかるぞ！」と豪快に笑った。イシェは苦笑いを浮かべながら、「またそんなことを言っても…」と呟いた。
テルヘルは、港の喧騒を背に、遠くを見つめていた。彼女の瞳は冷たく、そこに満ち潮のように広がる憎しみの影が宿っていた。ヴォルダンの紋章が刻まれた船が、ゆっくりと入港してきた。それは、彼女にとって永遠に忘れられない悪夢の象徴だった。
ラーンとイシェは、テルヘルの指示に従い、遺跡へと向かった。今回は特に危険な場所だと言われていた。狭い通路を進むにつれ、湿った石から漂う古びた臭いと、不気味な静けさに心が締め付けられるような感覚に襲われた。
「ここは何か変だな…」イシェは不安そうに呟いた。ラーンは気にせず、「大丈夫だ。きっと大穴があるぞ！」と前向きな声で答えたが、彼の瞳にもわずかな不安が宿っていた。
彼らは遺跡の奥深くへと進んでいった。満ち潮のように押し寄せる闇の中に、彼らの姿は徐々に小さくなっていった。そして、ついに目の前に広がる光景に言葉を失った。そこには、古代文明の栄華を物語る壮大な神殿が広がっていた。
しかし、その神殿の真ん中には、巨大な祭壇があり、そこに置かれたのは、黒曜石で作られた不気味な偶像だった。偶像からは、まるで生きているかのように、悪寒を誘う邪悪なエネルギーが放たれていた。
ラーンの顔色が変わり始めた。「これは…何か悪い予感がする…」
その時、遺跡の奥底から、獣のような咆哮が響き渡った。満ち潮のように押し寄せる暗闇の中、何者かが姿を現そうとしていた。