ビレーの朝はいつも早かった。まだ空が薄暗い中、ラーンはイシェを起こしに来た。「起きろ起きろ！今日はテルヘルが新しい遺跡の情報を持ってくるってんだぞ！」
イシェは眠そうに布団から顔を出した。「またそんな大それた話か…」と呟きながらも、ゆっくりとベッドから立ち上がった。
二人は小さな台所で作られた朝食を黙々と食べた。ラーンの粗雑な食べ方とは対照的に、イシェは丁寧に食事を進めた。温かいスープが体にしみ渡り、朝の冷えを和らげてくれる。
「今日は特に準備は必要ないって？」イシェは確認した。「テルヘルが言うには、遺跡の入り口は比較的安全らしいし、遺物も簡単なものらしいぞ」
ラーンの顔色が明るくなる。「よし！じゃあ、早速行ってみっか！」
二人は小さな街を後にして、テルヘルの待つ場所へと向かった。道中、ラーンはイシェに話しかけた。「あのね、イシェ…」
イシェが振り返ると、ラーンの顔には少しだけ真面目な表情があった。「もし、本当に大穴を見つけることができたら、お前はどうするんだ？」
イシェは一瞬考えてから答えた。「うーん…そうだな。ビレーを出て、もっと広い世界を見てみたいかな。新しい場所、新しい人々に出会って、色々な経験をしたいと思う。」
ラーンの顔には少し寂しげな表情が浮かんだ。「そうか…」
二人はしばらくの間、言葉を交わさずに歩を進めた。遠くの山に朝日が差し込み始め、空と大地が温かい光に染まり始める。
テルヘルが待ち受ける場所に着くと、彼女はすでに準備万端だった。地図を片手に遺跡の説明を始めた。「ここはかつての王家の墓だと考えられていて…」
ラーンの耳は半分も聞けていないようだった。彼はテルヘルの話よりも、イシェの将来について考えていた。イシェがビレーを出ていってしまうのは寂しいけれど、彼の夢を応援したいとも思った。温かい光が彼らを包み込み、未来への希望を感じさせた。