ラーンが力任せに岩をどかすと、イシェが小さくため息をついた。「また無駄な力仕事だな。あの隙間から覗き込めばわかっただろう」 イシェはそう言うと、狭い隙間を覗き込みながら、小さな声で呟いた。「ここには何もないようだ…」
ラーンの肩がガクッと落ちた。「そうか…残念だな。今日はもう帰るぞ」 ラーンはそう言って立ち上がったが、イシェは何かを見つけたようで、静かに「待った！」と叫んだ。
彼女は慎重に隙間から何かを引きずり出した。それは、小さな木製の箱だった。箱には複雑な模様が彫られており、どこか温かみのある輝きを放っている。「これは…？」 ラーンは目を丸くした。イシェは慎重に蓋を開けようと試みたが、固く閉ざされていた。
「開かない…」 イシェが呟くと、ラーンの視線がテルヘルに向き、彼女も興味深そうに箱を見つめていた。 テルヘルは少し考え込んだ後、小さく頷いた。「私はこの遺跡の記録を調べたことがある。この記号…もしかしたら、特定の方法で開く必要があるのかもしれない」
彼女は静かに箱の模様をなぞりながら言った。「この記号は、古代の言葉で『温もり』を意味するらしい…」 ラーンは首を傾げた。「温もり？」 イシェも少し考えてから、「もしかしたら…？」と呟いた。
彼女は近くの壁に手を当てた。壁は冷たかったが、イシェの指先からかすかな光が流れ出した。その光はゆっくりと箱へと伸びていき、箱の模様をなぞり始めた。すると、箱の蓋がゆっくりと開き始めた。
箱の中には、小さな水晶の球が入っていた。それは、温かい光を放ち、周囲に穏やかな雰囲気を漂わせていた。「美しい…」 イシェは感嘆の声を上げた。ラーンも思わず息を呑んだ。テルヘルは少しだけ唇を動かして微笑んだ。