ラーンの大声がビレーの喧騒を一瞬かき消した。「おい、イシェ!今日は俺が先導だ!」
イシェはため息をつきながら剣を腰に締めた。「また大穴探し?あの遺跡は既に何度も探しただろう。何か新しい情報でもあったのか?」
「いや、でもな…」ラーンは目を輝かせた。「今回は違う感覚があるんだ!まるで渦潮の中にいるような…何かが僕を呼んでる気がする!」
イシェは苦笑するしかなかった。ラーンの直感は時に当たることがあるのだが、大抵は空振りだった。しかし、テルヘルが提示した報酬額は魅力的だったし、何よりラーンが興奮している時はイシェ自身も少しだけワクワクする。
「よし、わかった。今回はお前についていくよ」
テルヘルは二人を冷静な目で見ていた。「目標は何か特定の遺物か?」
ラーンは首を横に振った。「いや、今回は…俺が感じる“何か”を探したいんだ!」
テルヘルは眉をひそめた。だが、ラーンの熱意に押されるように頷いた。「わかった。しかし、無茶はするなよ」
遺跡の入り口は、まるで巨大な獣の口のようだった。薄暗い通路は湿った石畳で覆われており、時折冷たい風が吹き抜けた。ラーンは先を急ぎ、イシェは後ろから彼を見守りながら慎重に歩を進めた。テルヘルは二人を少し離れた場所で、周囲を警戒しながら歩いていた。
深く潜るにつれて、空気は重く湿り気を帯びていった。壁には不気味な模様が刻まれ、まるで渦潮のように複雑に絡み合っていた。ラーンの呼吸が荒くなった。「ここだ!俺の直感が騒いでいる!」
イシェは不安を感じた。「ここは以前にも来た場所じゃないか?あの時何も無かったはずだ」
「違うんだ…今回は違う!何かが変わったんだ!」
ラーンは興奮気味に壁を叩いた。すると、壁の一部が沈み込み、奥から青い光が漏れてきた。ラーンの目は輝き、イシェは驚愕した。
「これは…」
テルヘルは冷静な声で言った。「罠かもしれない。警戒を怠るな」
しかし、ラーンはすでにその光に引き込まれているようだった。イシェはため息をつきながら、ラーンの後を追った。