「よし、今回はあの崩れかけた塔だ!噂によると奥深くには未踏の部屋があるらしいぞ!」ラーンが目を輝かせ地図を広げた。イシェは眉間に皺を寄せた。「また噂話か?そんな薄っぺらい情報に惑わされてばかりじゃいつまで日暮らしなのか。」
「いや、今回は違うって!あの塔には渡り鳥が毎年秋になると止まるんだって。渡り鳥が選ぶ場所ってのは何かあるはずだ。きっと何か特別なものが隠されているはずだ!」ラーンの言葉は熱を帯びていた。イシェはため息をついた。「またそんな理由で...」
「それに、テルヘルさんも興味を示してたぞ!あの遺跡には危険な罠があるらしいって。テルヘルさんならどんな罠も突破できるって信じてるんだ!」ラーンの言葉に少しだけイシェの表情が緩んだ。「まあ、テルヘルさんの言うことは正しいかもしれないわね。でも、今回は本当に慎重に進もうね」
3人はビレーから離れた山道へと足を進めた。空には渡り鳥の大群が優雅に飛んでいて、太陽に照らされて金色に輝いていた。ラーンは目を細めて見上げた。「よし!今日は必ず何かを見つけるぞ!」
崩れかけた塔の入り口に着くと、テルヘルが待っていた。「準備はいいか?この遺跡には強力な魔物が棲んでいるらしい。油断するなよ」
イシェは緊張した表情で剣を構えた。「ラーンも気を引き締めてね。今回は本当に危険かも。」
ラーンの顔は決意に満ちていた。「大丈夫だ!俺たちなら必ず乗り越えられる!」
3人は塔の中へと足を踏み入れた。薄暗く埃っぽい空間の中、渡り鳥の羽根が散らばっていた。イシェはそっと羽根を拾い上げた。軽い触感と、どこか懐かしさを感じた気がした。
「ここは...何か特別な場所なのかもしれない」イシェは呟いた。ラーンはイシェの言葉に耳を傾けず、塔の中心へと駆け込んでいった。
「おい!待てよ!」イシェがラーンの後を追いかけた時、突然床が崩れ始めた。イシェはバランスを崩しそうになった瞬間、ラーンの腕に掴まれた。
「大丈夫だ!俺が引っぱる!」
ラーンは必死にイシェを引き上げ、二人で安全な場所へ逃げ込んだ。振り返ると、崩れた床からは深い闇が広がっていた。
「あの...あの奥には何かあったみたいだ」イシェの震える声に、ラーンは力強く頷いた。「よし!俺たちは必ずあの謎を解き明かす!」
3人は互いの手を握りしめ、再び塔の中へと進んでいった。彼らの前に広がる未知の世界に、希望と恐怖が交錯していた。