ラーンの粗雑な剣さばきは、イシェの計算通りには動かないことが多く、いつもイシェを焦らせる。今日も遺跡の奥深く、崩れそうな石の間を進むラーンの後ろをイシェが渋い顔でついていく。「ちょっと待て、ラーン!あの隙間、足が引っかかるぞ!」と警告するが、ラーンは「大丈夫だ、イシェ。見てろよ、俺はこの程度の罠には引っかからない」と豪快に笑いながら進んでいく。すると、予想通りラーンの足が石の隙間に引っかかりバランスを崩した。イシェは慌ててラーンを支え、「言っただろう!もっと慎重に歩け!」と叱りつけた。「ほらほら、また怒ってるよ。心配しすぎだよ、イシェ」とラーンは軽く笑うが、イシェの眉間に深い皺が刻まれたままだった。
遺跡探索には危険が伴い、そのリスクを考慮して報酬が高額になる。彼らは遺跡から持ち出した遺物をテルヘルに渡すことで生計を立てている。しかし、近年遺跡からの出土品は質が悪く、価格も下落傾向にある。テルヘルはいつも眉間に皺を寄せ、交渉で妥協を強いられることが増えている。
「今回は特にいいものが見つかったのか?」とイシェが尋ねると、「いつものように、大したものはなかった」とラーンが肩をすくめた。「最近じゃ、遺跡の価値が減価しているみたいだな。昔はもっと貴重な遺物が出てきたらしいけど…」イシェも少し寂しそうに言った。
テルヘルは彼らに渡す報酬額を渋り、「今回は少し減額だ。この遺跡は期待外れだった」と冷たく告げた。ラーンの顔色が曇る。「おい、テルヘル!もう少しは考えてくれよ!」とラーンが反論しようとしたが、イシェが彼を押さえた。「気にしないよ、ラーン。テルヘルも困っているんだろう」とイシェは冷静に言った。しかし、イシェの心にも不安が渦巻いていた。この調子でいくと、自分たちの生活も成り立たなくなるのではないか…。