ラーンがいつものように大口を開けて笑うと、イシェはため息をついた。「また遺跡から宝が出たって話か?」
「違うんだって!今回は本物らしいぞ。ヴォルダン辺境の遺跡で、黄金の像が見つかったって!」
イシェは眉をひそめた。「噂話に振り回されるなよ。そんな大発見があったら、エンノル連合全体がざわめくはずだ」
「そうか…そうだろな」ラーンの顔色が少し曇った。最近、ビレーでも遺跡探索の依頼が増えてきた。かつては閑散としていた街も、今や人々で溢れかえり、行き交う馬車さえも渋滞を招いていた。
イシェは、ラーンの肩に手を置く。「心配するな。俺たちはいつか必ず大穴を掘るさ」と励ました。だが、イシェ自身の心にも不安が募っていた。
街の活気を表すように、ビレーの遺跡探査隊も活発化していた。かつては数えるほどしかいなかった探査隊が、今では dozens ほどのチームが活動しており、競争は激化の一途を辿っていた。
「おい、イシェ!」ラーンの声がする。「テルヘルが来たぞ!」
イシェが振り返ると、テルヘルが凛とした表情で彼らに近寄ってきた。黒曜石のような瞳は鋭く輝き、背筋を正した姿勢には凛とした緊張感が漂う。
「今日は新しい遺跡の調査だ」テルヘルは冷たく言い放つ。「今回はヴォルダンとの国境に近い場所だ。危険度は高いが、報酬も相当なものになるだろう」
ラーンは目を輝かせた。「よし!準備はいいぞ!」
イシェはため息をついた。いつも通りラーンの熱気に押される形で、テルヘルと共に遺跡へと向かうことになるのだ。彼の心には不安と期待が入り混じっていた。ヴォルダンとの国境に近い遺跡…一体どんな危険が待ち受けているのか?そして、本当に大穴を掘り当てられる日は来るのか?