ラーンの大ざっぱな指示に従い、イシェは石畳の上を慎重に歩いていた。ビレーから離れるほど気温が下がり、空気が乾燥していた。喉の奥が乾いてかゆい。イシェは小さな革の袋から水筒を取り出した。しかし、中に残っていたのはわずかな水滴だけだった。
「ラーン、まだ水はないのか?」
イシェの声を無視して、ラーンは遺跡の入り口に目を輝かせていた。巨大な石の扉が崩れ落ち、その向こうには漆黒の闇が広がっている。「よし、ここに大穴があるってのは間違いない!」と彼は叫んだ。イシェはため息をつきながら水筒をしまう。
「いつになったら、そんな大穴が見つかるんだよ…」
イシェの言葉にラーンは振り返り、満面の笑みを浮かべた。「いつか必ず見つかるさ!それに、テルヘルがくれた報酬で、いい酒と肉をたっぷり食べられるんだろ?」
イシェは苦笑した。確かに、テルヘルは遺跡探索の報酬として高額な金貨を提供していた。だが、その金貨も結局は食料や水を買うためだけに消えていく。
「そうだね…」
イシェは石畳の上を歩きながら、喉の渇きを我慢する。この遺跡、そしてこの旅がいつまで続くのか、イシェには見通せなかった。ただ一つ確かなのは、この乾いた大地で、彼ら三人は互いに頼り合いながら生きていくしかないということだった。