ビレーの酒場にはいつもより活気がなかった。ラーンの豪快な笑い声も、イシェの鋭い指摘も、どこか薄れて聞こえる。テーブルに置かれた酒はほとんど untouched のままだった。
「あの後、テルヘルは連絡来ないよな」
イシェが呟く。ラーンは黙って酒を一口飲む。あの遺跡で起こったことを思い出すと、喉が乾いて仕方がなかった。巨大なゴーレムとの遭遇、テルヘルの冷酷な判断、そしてその結果…。
「あれは…仕方ないよな」
ラーンの言葉は自信なさげだった。イシェは頷くしかできなかった。確かに、あの時、テルヘルは冷静かつ合理的に判断した。だが、その犠牲は大きすぎた。
「あの後、ビレーに戻ったら…」
イシェが言葉を濁すと、ラーンは力強く言った。「俺たちは何も変わんねえ」
イシェの視線がラーンの顔に釘付けになった。いつもなら笑みを浮かべているはずのラーンの顔には、不気味なほど真剣な表情があった。
「ビレーを出て、テルヘルを追いかける」
ラーンの言葉は決意に満ちていた。イシェは一瞬ためらったが、すぐに頷いた。「わかった。一緒に清算しよう」