ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑っている。イシェは眉間に皺を寄せ、グラスを小さく傾けていた。テーブルには、テルヘルが持ち帰ってきたばかりの地図が広げられていた。
「あの遺跡ね、聞いたことあるわよ。迷宮都市だなんて噂があるのよ」
テルヘルの言葉に、ラーンの目は輝きを増した。イシェは地図を指でなぞりながら、慎重に口を開いた。
「噂によると、その都市はヴォルダン軍の侵攻によって崩壊したらしい。今もなお、危険な魔物が出るとか…」
「そんなの気にすんな!」ラーンが立ち上がり、テーブルを叩いた。「大穴が見つかるかもって思うとワクワクするぜ!イシェもな、たまには冒険心燃やしてみろよ!」
イシェはため息をつきながら、地図をしまう。ラーンの熱意には敵わなかった。だが、テルヘルの目的が何か、まだ見通せない。その瞳に宿る執念のようなものを感じていた。
遺跡の入り口は崩れかけていて、不気味な影が立ち込めていた。ラーンが先頭に立って踏み出すと、イシェとテルヘルが続いた。
迷宮都市の中は、かつて栄えていた様子を伺わせる石柱や壁画が残っていた。しかし、その多くは崩落し、闇に包まれていた。
「ここら辺は、ヴォルダン軍の攻撃を受けた跡らしい」
テルヘルが呟くと、イシェは足元に目をやった。地面には、焦げ付いた骨と錆びた武器が散らばっていた。
「あの時、何が起こったんだろう…」イシェが呟くと、ラーンが肩を叩いた。
「そんなこと考えないで、宝探しに集中しろよ!」
ラーンの言葉に、イシェは小さく頷いた。だが、胸の奥には不安な影が落とされていた。
迷宮都市を進むにつれて、イシェの不安は増していく。遺跡の構造が複雑で、地図だけでは方向感覚を失いやすい。
「ここ…どこかで見たことあるような…」
イシェが呟くと、ラーンが振り返った。その時、後ろから不気味な音が聞こえた。
振り返ると、そこには巨大な魔物がいる。その姿は、かつてヴォルダン軍に仕えていた魔物のようだった。
「これは…!」
イシェが言葉を失うと、ラーンが剣を抜き出した。テルヘルも daggersを構え、戦闘態勢に入った。
三人は魔物と戦い始めた。ラーンの力強い攻撃は魔物を怯ませるものの、その巨体はなかなか倒れなかった。イシェは素早い動きで魔物の攻撃をかわし、隙を狙って攻撃する。テルヘルは冷静に状況を判断し、ラーンとイシェの連携を支えた。
激しい戦いの末、魔物もついに倒れた。
「あの魔物…ヴォルダン軍が何かしらの実験を行っていたのか…」イシェが呟くと、テルヘルは頷いた。
「そうかもしれない。そして、この遺跡にはヴォルダンの秘密が眠っている可能性が高い」
ラーンは疲れた様子を見せながらも、目を輝かせていた。
「よし!これで大穴が見つかるのも時間の問題だ!」
イシェは、ラーンの言葉に少しだけ安心を感じた。だが、同時に、テルヘルの目的と、この遺跡の謎について、まだ多くのことを知らないと感じていた。