ビレーの朝焼けは、いつもより少しだけ紅く染まっていた。ラーンは、その色を気にしながら、イシェを起こした。
「今日はいい日になりそうだな!あの遺跡、まだ残ってたはずだ」
イシェは眠そうな目をこすりながら、ラーンの言葉に反論した。「また大穴の話か?あの遺跡は危険だって聞いたぞ。それに、テルヘルがそんな簡単に報酬を払うと思うのか?」
ラーンは、イシェの言葉を無視して、剣を手に取った。「大丈夫だ!俺が守ってやるからな!」
テルヘルとの約束は曖昧だった。高額の日当と遺物の独占という条件だったが、具体的な遺跡や目的は明かされなかった。ただ、彼女の言葉には、何か大きな計画があるような、重みがあった。
遺跡の入り口は、崩れかけの石造りの階段だった。薄暗い空気に、不気味な静けさが漂っていた。ラーンは先頭を歩き、イシェは後ろから彼を見守りながら進んだ。テルヘルは二人よりも後ろを少し離れて歩いていた。彼女の目は鋭く、周囲を常に警戒していた。
遺跡内部は、迷路のような構造になっていた。壁には、古びた文字が刻まれており、ラーンの理解を超えていた。イシェは、懐から小さなランプを取り出し、わずかな光を放った。その光が、壁の影に隠れた何かを一瞬だけ照らしたその時、イシェは背筋が凍りついた感覚に襲われた。
「何かいる」
イシェの声に反応して、ラーンとテルヘルも静かに動きを止めた。すると、奥からかすかな音が聞こえてきた。それは、まるで金属同士がぶつかるような音だった。
ラーンの顔色が変わった。「これはマズいぞ…」
彼らが進むべき道は一つしかない。それは、混沌へと続く道だった。