ラーンが巨大な石の扉に剣を突き立てた。轟音と共に扉は崩れ落ち、埃が立ち込める中、イシェは咳き込んで顔をしかめた。
「またも大した物がないじゃないか」
イシェの声にラーンは苦笑した。「そうだな。でも、ほら、まだ奥があるぞ！」
彼は興奮気味に遺跡の奥へと進んでいく。イシェはため息をつきながらラーンの後を続けた。いつもならイシェが慎重に周囲を確認しながら進むのだが、今回は何かが違う。心の中に不安な影がちらついているのだ。
「ねえ、テルヘル」
イシェは振り返り、テルヘルに尋ねた。「この遺跡、本当にヴォルダンに関係あるのか？」
テルヘルは静かに頷きながら、鋭い視線で遺跡の中をくまなく見回した。
「ここはかつてヴォルダンの支配下にあった。彼らの秘密兵器が眠っている可能性もある」
イシェはテルヘルの言葉に恐怖を感じた。ラーンはあくまで冒険心で遺跡を探しているが、テルヘルには別の目的がある。彼女は何を狙っているのか？ そして、本当にヴォルダンと何か関係があるのか？
イシェは混乱する自分の心に戸惑った。ラーンの無邪気な笑顔、テルヘルの冷徹な表情、そして遺跡の奥から聞こえる不気味な音。すべてが混ざり合って、イシェの心を蝕んでいくように感じた。