ビレーの酒場「三叉路」はいつも騒がしかったが、今日は特に活気があった。ラーンとイシェのいつもの席には、テルヘルが座り、鋭い視線でグラスを傾けていた。
「噂では、ヴォルダン軍が国境付近で動きを見せているらしいぞ」
イシェがそう言うと、ラーンの顔色が少し曇った。テルヘルは冷ややかに笑った。
「気にしなくていいわ。私たちには関係ない。目的を果たせば、ヴォルダンなど粉々に砕いてやるわ」
彼女の言葉に、ラーンは小さくうなずいた。テルヘルが彼らを雇ったのは、ヴォルダンへの復讐だった。そのために、彼らは危険な遺跡を探索し、古代の遺物を求めていた。
「今日の遺跡は、少し特殊だ」
テルヘルは地図を広げ、指で示した場所をイシェに見せた。そこには、複数の遺跡が複雑に混在するエリアが記されていた。
「ここはかつて複数の文明が交錯した場所らしい。貴重な遺物も多いが、同時に危険も高い」
イシェは眉間に皺を寄せた。ラーンは、いつものように無邪気に笑った。
「そんなの面白そうじゃないか!大穴が見つかるかもしれないぞ!」
テルヘルはラーンの軽率さにため息をついたが、内心では彼の行動力に期待していた。彼らの目標はヴォルダンへの復讐だが、その過程で彼ら自身も変化していくことを彼女は知っていた。異なる出身、異なる境遇を持つ三人は、互いに影響を与え合いながら、混ざり合うように運命を紡いでいくのだ。