ラーンが石の破片を蹴飛ばすと、イシェは眉間に皺を寄せた。「また無駄なエネルギーを使うな。あの遺跡は俺たちの力では無理だ。」
「イシェ、お前はいつもこうなんだよ。せっかくだし、少しは楽観的に考えようぜ！」ラーンは陽気に笑ったが、イシェは彼の様子にどこか悲しげな影を感じた。
テルヘルは冷静な目で遺跡の入口を吟味していた。「この遺跡はヴォルダン帝国のものだ。かつて多くの犠牲者を出した場所だと伝えられている。」彼女の言葉にラーンの表情が曇る。
「ヴォルダンか…」イシェもまた、帝国との因縁を深く恨んでいた。
テルヘルは剣を抜き、鋭い視線でラーンとイシェを見据えた。「ここには危険な罠があるかもしれない。だが、その中に我々が求めるものもある。お前たちは覚悟があるか？」
ラーンの瞳に闘志が燃え上がる。イシェはため息をつきながらも、テルヘルの言葉に心を揺さぶられる。三人は遺跡へと足を踏み入れた。
洞窟内部は薄暗く、湿った空気と土の臭いが漂っていた。壁には奇妙な模様が刻まれており、時折、不気味な音が響く。ラーンの足取りは軽快だが、イシェは慎重に周囲を警戒しながら進む。テルヘルは先頭を歩き、時折振り返りながら三人の様子を見守る。
「この遺跡の奥に眠るものは一体何なのか…」イシェは呟いた。
「誰にも分からない。だが、きっと価値あるものだ。」テルヘルの言葉は冷酷なまでに断固たるものであった。
彼らは遺跡の深部へと進んでいくにつれて、周囲の雰囲気がより重く、不気味なものになっていった。壁には奇妙な絵画が描かれており、淫蕩に満ちた光景を表現していた。イシェは目をそらすようにし、ラーンは不快な表情を見せた。
「これは…何だ？」イシェは震える声で言った。
彼らは巨大な石の扉の前に立ち尽くしていた。扉には複雑な紋章が刻まれており、その中心には宝石が埋め込まれていた。宝石から放たれる光が、彼らの心を不気味なまでに刺激する。
「この扉を開けば、我々の求めるものが見つかるはずだ。」テルヘルは言った。
ラーンは興奮した様子で扉に手を伸ばそうとしたが、イシェは彼を制止した。「待て！何か罠があるかもしれない！」
しかし、ラーンの手は扉に触れようとしていた。その瞬間、扉から不気味な光が放たれ、三人は強い衝撃を受けた。
意識を取り戻したとき、彼らは別の場所にいた。そこは広大な部屋で、壁一面に宝石が埋め込まれていた。部屋の中央には、巨大な祭壇が置かれており、その上に何かが祀られていた。
「これは…！」イシェは目を丸くする。
ラーンは興奮し、祭壇に近づこうとした。だが、テルヘルは彼を制止した。「待て！あの祭壇には危険が伴うかもしれない。」
しかし、ラーンの好奇心は抑えきれない。彼はテルヘルの制止を振り払い、祭壇に近づいていった。そして、祭壇の上に置かれていたものを見た瞬間、彼の顔色を失った。
祭壇には、美しくも淫蕩な女の彫像が置かれていた。その目は宝石でできており、まるで生きているかのように光っていた。そして、その下には、血に染まった剣が刺さっていた。