ラーンが石を蹴飛ばす音だけが、静かな遺跡の空気を乱す。イシェが眉間にしわを寄せて地図を広げている。「本当にここなのか? この記号は…。」
「大丈夫だ、イシェ。あの崩れた壁の下に必ず何かあるはずさ!」ラーンは豪快に笑う。イシェはため息をつきながら、彼の肩を軽く叩いた。「いつもそう言って、結局何も見つからなかったじゃないか」。だが、ラーンの言葉には不思議な力があり、イシェの心も少しだけ高鳴る。
テルヘルは背後から、冷めた声で言った。「時間がない。早く遺物を見つけ出して、ヴォルダンへの復讐の準備を始めなければ。」彼女は視線を遺跡の奥深くにやった。そこには、まるで浮雲のように、何かが蠢いているようにも見えた。ラーンの軽率な行動にイシェはいつもハラハラするが、テルヘルの冷酷さはそれ以上に不安を煽る。
ラーンは剣を抜いて、崩れた壁に向かって突進した。「ほら、見てろよイシェ!大穴だ!」彼の叫びが遺跡の奥底に響き渡った。石塵が舞う中、イシェはテルヘルの顔色を見て言葉を呑んだ。テルヘルはかすかな笑みを浮かべていた。まるで、この遺跡が予期せぬ何かを秘めていることを知っていたかのようだ。
イシェは、心の中で呟いた。「一体何が待っているんだろう…」空を見上げると、そこには白い雲がゆっくりと流れている。まるで何かのメッセージを伝えようとしているように見えた。