「よし、ここだ!」ラーンが興奮気味に叫んだ。崩れかけた石造りの壁の隙間から薄暗い空間が見えた。「あの噂の遺跡か?」イシェは眉間に皺を寄せて言った。「ここには危険な罠があるって聞いたぞ。本当にここに潜るのか?」
「大丈夫だ、イシェ。」テルヘルが冷静に言った。「私は事前に調査した。罠は回避できる。それに、この遺跡には貴重な遺物があるはずだ。我々の報酬も大きくなるだろう。」ラーンの顔は輝きを放っていた。「大穴だ!ついに大穴が見つかるぞ!」
彼らは慎重に崩れた壁をくぐり抜け、遺跡内部へと足を踏み入れた。薄暗い空間には埃が舞っていて、空気が重苦しい。足元には石畳が敷かれていたが、ところどころ欠け落ちていて、深い闇の中に沈んでいた。「ここは一体何だったんだろうな…」ラーンは呟きながら、石畳の上を歩いた。
イシェは周囲を警戒しながら歩を進めた。彼女の視線は壁に描かれた奇妙な模様に釘付けになった。「これって…何か呪文みたいだぞ…」
「気をつけろ。」テルヘルが低い声で言った。「この遺跡には悪霊が生息しているという噂もある。念のため、常に警戒を怠るな。」
彼らは遺跡の奥へと進んでいくにつれて、空気がより重く、不気味になった。壁には奇妙な絵画が描かれており、石造りの像が立ち並んでいた。そして、やがて彼らは広間に出た。
中央には崩れかけた浮橋があり、その向こう側に光る何かが見えた。「あれは何だ?」ラーンは目を輝かせた。「宝物か?!」イシェは警戒心を強めて言った。「あの橋を渡ると危険かもしれないぞ…」
「大丈夫だ。」テルヘルが言った。「私は事前に調査した。この橋は安全だ。渡れば、我々の目的の遺物は手に入る。」彼女はラーンの手を引っ張り、浮橋へと向かった。イシェはためらいながら二人の後を続けた。
浮橋は不安定で、足音が響き渡った。下に暗い空間が広がっているのが見えた。「うっ…」イシェは怖くなって足をすくめた。ラーンは彼女の手をつかみ、しっかりと引っ張った。「大丈夫だ、イシェ。俺がいるぞ!」
彼らはゆっくりと浮橋を渡り、ついに反対側へとたどり着いた。そして、目の前に広がる光景に息を呑んだ。そこには、黄金でできた祭壇があり、その上に輝く宝石が置かれていた。
「これは…」ラーンは言葉を失った。「大穴だ!」イシェも目を丸くした。テルヘルは満足そうに微笑んだ。
だがその時、後ろから不気味な声が聞こえた。「何者だ?」
彼らは振り返ると、そこには黒い影が立っていた。影はゆっくりと近づき、その姿が明らかになった。それは、巨大な怪物だった。
「これは…!」ラーンが剣を抜いた。「戦うぞ!」