ビレーの酒場「錆びた剣」の賑やかな喧騒の中、ラーンはイシェに声をかけた。「おい、イシェ、今日の遺跡はいつ行くんだ?」
イシェはグラスを傾けながら、眉間にしわを寄せて言った。「まだだな。テルヘルが何か企んでいる気配がある。あの女のことだから、また危険な遺跡に連れて行こうとするに違いない」
ラーンは豪快に笑い、「危険ならこそ面白いだろ!それに、大穴を見つけるチャンスもあるかもしれないぞ!」と言った。イシェはため息をつきながら、「大穴なんて、いつまで夢見ているんだ…」と呟いた。
その頃、テルヘルはビレーの郊外にある古びた塔を見つめていた。彼女は地図を広げ、塔の周囲を流れる川の流れを確認していた。
「ここだ…この塔にはヴォルダンが隠した秘密があるはずだ」
彼女は塔に続く道を歩き始めた。道は険しく、崩落寸前の崖や深い谷も存在した。しかし、テルヘルは一歩も怯まずに進んでいった。彼女を導くのは復讐心と、ヴォルダンが隠したという「浮島」の伝説だった。
「浮島」とは、空中に浮かぶという古代文明の遺跡だ。そこに眠るという莫大な財宝と知識こそが、ヴォルダンとの戦いに勝利するための鍵だと信じている。
数日後、ラーンとイシェはテルヘルに連れられて塔の前に立った。「ここが今回の遺跡か…」イシェは不安げな顔で言った。
ラーンの視線は塔の上部にある奇妙な石造りの円盤に向けられていた。「あれは何だ?なんか…空に向かって浮かんでいるみたいだな」
テルヘルはニヤリと笑った。「それがこの遺跡の秘密だ。伝説によると、あの石造りの円盤はかつて『浮島』を支えていたものだという。その力を解き放てば、ヴォルダンに復讐を果たすことができる…」
ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。彼らはテルヘルの言葉の意味を理解していなかったが、彼女の声から感じられる狂気のような強い意志を感じ取っていた。