ビレーの朝はいつも早かった。ラーンが目を覚ますと、イシェがすでに朝食の準備をしていた。薄暗い小屋に火の光が揺らめいて、イシェの影が壁に大きく伸びている。
「今日はどこへ行くんだい?」
イシェはそっと呟きながら、鍋を火にかけ直した。「テルヘルが新しい遺跡の情報を入手したらしい。今回はヴォルダンとの国境に近い場所だ。危険度が高いと警告していたよ」
ラーンの顔色が少し曇る。「また危険な場所か…」
「でも報酬は高いって聞いたぞ。大穴が見つかるかも…」
ラーンはいつものように、楽観的な口調で言ったが、イシェは彼の瞳に映る不安を感じ取った。
最近、ラーンの様子がおかしいのだ。いつもは明るい彼だが、最近はどこか影を落としている。イシェは理由を分からずに心配していた。
テルヘルは今日も鋭い眼光で二人を見下ろす。「準備はいいか?今回は慎重にやらないと、命を落とすぞ」
彼らは遺跡の入り口にたどり着くと、テルヘルが地図を広げて説明を始めた。複雑な構造の遺跡は、まるで迷宮のようだった。
「ここが目標地点だ。この遺跡には強力な魔物が棲んでいるらしい。注意深く行動しろ」
遺跡の中は暗く、湿った空気が漂っていた。ラーンとイシェは緊張しながら、テルヘルの後をついて進んだ。
足音だけが響く静寂の中で、突然、壁から巨大な影が飛び出した。ラーンの剣が光り、イシェが素早く身をかわす。激しい戦いが始まった。
魔物の攻撃は強力で、ラーンは何度も危機を免れるかのように切り抜けた。イシェは冷静に状況を見極め、隙を突いて攻撃する。
テルヘルは魔法を駆使して魔物と戦いながら、二人をサポートした。だが、魔物は強敵で、徐々に彼らを追い詰めていく。
その時、ラーンの剣が魔物の体中に突き刺さった。魔物の咆哮が響き渡り、ゆっくりと倒れていった。
激しい戦いの後、三人は息を切らしながら立ち上がった。
「よかった…」
イシェは安堵の声を漏らした。
「だが、まだ油断はできない」
テルヘルは冷静に言った。
遺跡の奥深くには、まだ多くの謎が隠されている。彼らはこれからも、危険な遺跡に挑み続けることになるだろう。
彼らの運命は、この浮き沈みの激しい世界で、どのように変化していくのだろうか?