ラーンが「大穴だ!」と叫んだ時、イシェは眉間に皺を寄せた。「またか…」と呟きながら、ラーンの背後から慎重に遺物のかけらを拾い上げた。
「本当に財宝が見つかると思っていたのか?」イシェの言葉に、ラーンは少しだけ頬を染めた。「いつか必ず見つかるって!ほら、こんな場所にも遺跡があるんだから!」彼は目を輝かせた。
確かにビレー周辺には多くの遺跡が存在した。しかし、これまで見つけた遺物はどれも些細なものばかりだった。イシェは現実的に考えていた。「大穴」なんてものは存在するのかと。
テルヘルは冷静に状況を分析していた。この遺跡はヴォルダンとの関係がある可能性が高いと彼女は判断していた。ヴォルダンに奪われた大切なものを、この遺跡で見つけることができるかもしれない。そのために、彼女はラーンとイシェを利用しているのだ。
「よし、今日はここまでにしよう」テルヘルがそう告げると、ラーンは少し肩を落とした。「え?もう帰るのか?」イシェも少し驚いたようだった。「今日の成果はあまりにも少ない。明日、別の遺跡を探そう」とテルヘルは言った。
日が暮れ始め、三人はビレーへと戻り始めた。道中、ラーンの足が止まった。「あれ?あの浅瀬…」彼は指差す方向を見た。イシェも振り返った。「ああ、あの浅瀬だ」と呟いた。
浅瀬を渡ると、ビレーの灯りが見えた。ラーンの背中には、少しだけ希望が宿っていたように見えた。