「準備はいいか?」テルヘルが鋭い視線でラーンとイシェを見据えた。二人は互いに頷き、ビレーの朝焼けに照らされた遺跡へと足を踏み入れた。
「今回は情報が薄くてな。何があるかは、現地に入ってからだな」ラーンの言葉にイシェは眉をひそめた。「あのテルヘル、本当にこの遺跡で何かを見つけたつもりなんだろうな…」
彼らはヴォルダンとの国境付近にある遺跡を探索する任務を任されていた。テルヘルは、この遺跡にはヴォルダンが密かに兵器を隠しているという情報を掴んだと告げていた。だが、イシェにはその情報源も信憑性も疑わしいと感じられた。
遺跡内部は暗く湿っていた。ラーンが先頭を切って進む中、イシェは足元を注意深く見て歩いた。テルヘルは後ろから二人を見下ろすように歩いていた。
「ここだ!」ラーンの声が響き渡った。目の前には巨大な石碑が立っていた。表面には複雑な模様が刻まれており、その一部は崩れ落ちている。「これは…何か特別な遺物なのか?」イシェが石碑を慎重に調べると、テルヘルが声を上げた。
「この模様…ヴォルダン軍の紋章だ!ここに兵器が隠されているのは間違いない」
イシェは不安を感じた。テルヘルが本当にヴォルダンと敵対しているのか、それとも何か別の目的があるのか。彼女の言葉の裏には、何か別の意図が潜んでいるような気がした。
石碑の背後にある壁を崩し始めると、そこは広大な地下空間だった。そこには、武器や兵器が山積みになっていた。イシェは息を呑んだ。
「これは…すごい…」ラーンも目を輝かせていた。
テルヘルは冷静に状況を把握していた。「この情報、市場に出せれば大金になるぞ」彼女は言った。「お前たちにも分け前を渡す」
イシェは彼女の言葉に疑問を抱いた。「市場に出す…?」
「そうだな。武器や兵器は流通すれば価値がある。ヴォルダンと敵対する国々に売れば、さらに高い値段がつくだろう」テルヘルは冷酷な笑みを浮かべた。
イシェは混乱した。遺跡から得た遺物は、単なる歴史的価値を超えて、政治的影響力を持つものだったのだ。そして、テルヘルはそれを利用しようとしている。
「ラーン、この遺跡の情報を外部に漏らすな」イシェはラーンの腕を掴んだ。「何かおかしい…テルヘルの本当の目的は…」