ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑い声を上げていた。テーブルの上には空になった酒樽と、イシェが眉間にしわを寄せて眺める残りの硬いパンがあった。
「あの遺跡、本当に財宝の匂いがしたぜ!次は必ず大穴を見つける!」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。「また同じこと?ラーン、もう何度もそう言ってるよ。あの遺跡はただの廃墟だっただろう」
「いや、違う!あの石板の模様、あれは何かを示唆しているはずだ!古代文明の秘密に近づく手応えを感じたんだ!」
ラーンの熱意に押されるように、イシェも小さく頷いた。しかし、彼女の心には不安が渦巻いていた。最近、ビレー周辺の遺跡探索は難航していた。かつては貴重な遺物が出土する場所だったのに、最近は空っぽの洞窟ばかりだったのだ。まるで何かが奪い去られたかのように。
そんな時、扉が開き、テルヘルが入ってきた。彼女の鋭い視線は、ラーンとイシェを交互に舐めるように巡らせた。
「準備はいいですか?次の遺跡の情報を入手しました。ヴォルダン領に近い場所ですが、そこにはかつての王家の墓があると噂されています。もし本当なら、莫大な財宝が眠っている可能性があります」
ラーンの顔は一瞬で輝きを取り戻した。「よし!行くぞ、イシェ!」
イシェはテルヘルの言葉に躊躇する。ヴォルダン領へ近づくことは危険すぎる。しかし、ラーンの熱意とテルヘルの冷酷な表情を見て、彼女は小さく頷いた。
三人はビレーの薄暗い夜道を、目的地へと向かって歩み始めた。彼らの足取りは、流転する運命に導かれるかのように重く、そして軽かった。