ラーンの粗野な剣撃が遺跡の壁を削り、埃が舞い上がった。
「おい、ラーン！あの石碑の奥じゃないか！」イシェの声が響く。彼女は慎重に足場を確認しながら、崩れかけの通路を進んでいた。ラーンの豪快さと違い、彼女の動きはまるで猫のようにしなやかだ。
「わかったわかった、急ぐなよイシェ。宝探しの醍醐味はゆっくり味わうことだろ？」
ラーンがそう言うと、石碑の奥にある小さな部屋へと入っていった。そこには、古びた棺が置かれていた。
「また空っぽか…」
ラーンの肩を落とした様子に、テルヘルは冷ややかに言った。「何だ、今回は何もないのか？」
「いや、ちょっと待てよ…」
イシェが棺の脇にある小さな石板を見つけ出した。「これは…古代語で書かれている！」
テルヘルの視線が鋭く光った。「解読できるか？」
イシェは首を横に振る。「少し時間がかかるかもしれない。この文字体系は複雑で…」
「時間はない！ヴォルダンに先を越される前に、この遺跡の秘密を解き明かさなければ！」テルヘルは焦燥感で声色が荒くなる。
ラーンは彼女の様子を見て、眉間に皺を寄せた。いつも冷静なテルヘルの表情が、どこか狂気を帯びているように見えた。
「おい、テルヘル。落ち着けよ。イシェが解読すればいいんだろ？」
「時間は限られている！この遺跡にはヴォルダンが欲しがっているものがあるはずだ。それを手に入れるためにも、我々は力を合わせて…」
テルヘルの言葉は途切れ、彼女は目を閉じた。そして、ゆっくりと呟いた。「流用…あの力を…」