ラーンが巨大な石の扉に剣を突き立てると、轟轟と音を立ててゆっくりと開いた。埃っぽい空気が流れ込み、イシェは咳き込んだ。
「よし、今回は大穴だ！」
ラーンのいつもの豪語にイシェは眉をひそめた。遺跡の入り口にはいつもこんな風にラーンが叫ぶが、今まで一度も大穴は出てこなかった。
「落ち着いて、ラーン。ここは以前から調査済みだ。大したものは無いだろう。」
テルヘルが冷たく言った。彼女の目は鋭く、周囲を警戒している。彼女はいつもこうだった。冷静沈着で、まるでこの遺跡探索自体に目的があるわけではないかのように見えた。
「おいおい、テルヘルさん。そう言わずに、少しは夢を見ようぜ！」
ラーンは笑って言ったが、イシェには彼の笑顔にも少しの不安を感じられた。最近、ラーンの冒険心は以前より薄れてきているように思えたのだ。
遺跡の中は暗く湿っていた。壁には奇妙な模様が刻まれており、イシェは懐中電灯を照らしながら慎重に進んでいった。テルヘルは常に後ろから彼らを見守り、時折何かを呟いていた。ラーンの足取りは軽いが、イシェは彼の背中に何か重荷があるように感じられた。
奥へ進むにつれて、遺跡の雰囲気が重くなっていった。壁から不気味な光が漏れ、冷たい風が吹き抜けた。イシェは背筋がぞっとした。
「ここには何かいる……」
イシェが呟くと、その時だった。天井から突然石が崩れ落ちた。ラーンは咄嗟にイシェを庇い、共に地面に倒れた。
「大丈夫か！？」
イシェは慌ててラーンの顔を見つめた。彼は少し血を流していたが、意識はあるようだった。
「ああ、大丈夫だ。心配するな、イシェ。」
ラーンは苦笑いしながら言った。その時、突然空が明るくなった。
外から流れ込んできた光が遺跡の中を照らし出し、天井の隙間から何かが落ちてきた。それは、夜空に輝く流星だった。
流星が遺跡の中に落ちると同時に、遺跡全体が激しく振動し始めた。石が崩れ落ち、壁が割れていく。イシェはラーンの手を強く握りしめ、恐怖で震えた。
「何だこれは……！」
テルヘルが叫んだ。彼女の顔には初めて見たほどの驚きと恐怖の色が浮かんでいた。
遺跡の奥から、何かがゆっくりと動き始めた。それは巨大な影であり、流星が落ちた場所に近づいていく。イシェはラーンを引っ張りながら、逃げ出した。
しかし、その影は彼らを追いかけるように動き、遺跡全体が崩壊していくかのようだった。