「おい、イシェ！あの光、見たか？」
ラーンが興奮気味に叫んだ。夜空に一瞬、白い筋が走り抜けた。イシェは眉間に皺を寄せながら上を見上げた。
「流れ星？そんなもの見てる余裕はないわよ。まだ半分も探索できてないじゃないの」
イシェは疲れた様子で、道具を整理しながら言った。ラーンは意に介さず、遺跡の奥深くへ続く通路を指差した。
「ほら、あの奥だ！きっと大穴があるぞ！流れ星が導いてるんだ！」
イシェはため息をつきながら、ラーンの後ろについていった。テルヘルは二人のやり取りを静かに見ていた。彼女の目は鋭く、常に周囲を警戒しているように見えた。
「あの遺跡の地図、まだ見つからなかったか？」
テルヘルが尋ねると、イシェは首を振った。
「まだ何も出てこないわ。この遺跡、何か変だと思うのよ。いつもと違う雰囲気」
ラーンの無邪気な性格とは対照的に、イシェは慎重で用心深い。彼女の直感は時として鋭かった。テルヘルもまた、イシェの言葉に耳を傾けた。
「何かあるかもしれない。警戒を強めろ」
テルヘルはそう告げると、剣を軽く握りしめた。三人は遺跡の奥へ進んだ。通路は狭く、石壁には古びた文様が刻まれていた。時折、不気味な音が響き渡る。
ラーンの足取りは軽快だったが、イシェは常に周囲に気を配っていた。テルヘルは二人を見守りながら、何かを察知しているかのような表情で歩を進めていた。
突然、床が崩れ始め、ラーンが転落しそうになった。イシェは咄嗟にラーンの腕をつかみ、引き上げた。
「危ない！気を付けて！」
イシェの言葉にラーンは顔をしかめたが、すぐに立ち上がった。
「なんだよ、イシェ。ビビりすぎだぞ」
「ビビってないわ！ここは本当に危険な場所かもしれないのよ」
イシェは冷静に言った。その時、テルヘルが何かを叫んだ。
「あれは…！」
テルヘルの指さす先には、壁に埋め込まれた小さな石碑があった。石碑には、流れ星のような模様が刻まれていた。