「よし、今日はあの崩れかけた塔だな！イシェ、準備はいいか？」ラーンが目を輝かせると、イシェはため息をつきながら革のリュックを締め直した。
「また危険な場所を選んだわね。本当に大穴が見つかると思っているのかしら？」
「見つけられるさ！ほら、あの流れ品が運んだ宝珠みたいなのがあったあの塔だろ？あれはきっと入り口だ！」
ラーンの言葉にイシェは苦笑する。ラーンは遺跡探索には熱心だが、その判断基準は怪しいものばかりだった。
一方、テルヘルは二人が口論している様子を冷静に見つめていた。彼女は自分たちの目的を果たすために、この二人が必要なのだ。
「準備はいいでしょう？今日は重要な発見があるかもしれません」テルヘルの声が響くと、ラーンとイシェは顔を見合わせた。
崩れかけた塔の入り口に足を踏み入れると、すぐに湿った石畳が足元に広がっていた。薄暗い通路を進むにつれ、空気が重く、不気味な静寂に包まれていった。
「何かいる…？」イシェが小声で呟くと、ラーンは剣を構え、周囲を警戒する。テルヘルは二人をじっと見つめて、何かを察知しているようだった。
やがて彼らは塔の中央にある広間にたどり着いた。そこには巨大な石碑が立っており、その表面には複雑な模様が刻まれていた。
「これは…！」ラーンの声が震える。「もしかして、これが大穴への入り口か？」
イシェは石碑に近づき、指で模様をなぞった。
「流れ品が運んできたこの塔…もしかしたら、この石碑こそが鍵なのかもしれない」
その時、石碑の表面から光が放たれ、部屋中に広がった。三人は目をぎゅっと閉じた。そして、光が消えたとき、彼らの前に新たな空間が広がっていた。
「これは…」テルヘルは驚きの声を上げた。
そこには、宝石や金貨で埋め尽くされた広大な宝庫が広がっていた。
「やった！大穴だ！」ラーンの叫び声が響き渡った。
イシェも言葉を失い、ただその光景を眺めていた。しかし、テルヘルは宝の山を前に、複雑な表情をしていた。
彼女は宝に手を伸ばすことなく、石碑の模様をじっと見つめた。
「これは…ヴォルダンが求めているものかもしれない…」