「よし、今回はあの崩れた塔だな。イシェ、地図を確認しろ」ラーンが豪快に言った。イシェは小さくため息をつきながら巻物を広げた。テルヘルが鋭い目で二人を見つめる。「情報によれば、塔の奥にはヴォルダンがかつて使用していたという特殊な装置があるらしい。それが我々の目的だ」
「またヴォルダンか…」ラーンの顔色が曇る。「あの大国と何の恨みがあるんだ?」イシェはテルヘルの目を避けながら言った。「過去に何かあったんでしょう。彼女はそう言っていた」
遺跡の入り口で、ラーンが剣を構える。「よし、行くぞ!」彼の背中には、いつも通りの無邪気な笑顔が見えた。だが、イシェの心には不安が広がる。最近、テルヘルの言葉に不穏なものを感じ始めるようになっていたのだ。特に「ヴォルダンとの対立は避けられない」という言葉が胸にひっかかる。「一体、彼女はどんな計画を立てているんだろう…」
塔の中は暗く湿っていた。埃っぽい空気が肺に張り付くように重く、足元には崩れそうな石畳が広がる。「気をつけろ、ラーン」イシェが注意深く前を進んだ。ラーンの無鉄砲さはいつもイシェを不安にさせた。だが、彼の純粋な心と仲間への忠誠心は偽りなく、イシェは彼を信頼していた。
塔の奥深くまで進むにつれて、壁には奇妙な模様が刻まれていた。まるで古代の文字のようだが、イシェには意味が分からなかった。「これは何だ?」ラーンが指さす。「ヴォルダンの技術らしい」テルヘルが答えた。「この装置は強力なエネルギーを秘めている。それを利用すれば…」彼女の言葉は途中で途絶えた。
その時、背後から不気味な音がした。ラーンが振り返ると、影が彼らを襲いかかってきた。激しい戦いが始まった。剣と魔法の光が塔の中に飛び散る。イシェは必死に敵をかわしながら、ラーンの安全確保に全力を注いだ。「ラーン、気をつけろ!」
激戦の中、テルヘルは冷静さを保ちながら戦況を見極めていた。だが、彼女の瞳には、どこか冷酷な光が宿っていた。イシェは気づいていなかった。彼女は自分の目的のために、ラーンとイシェを道具として利用していることに…。