「よし、ここだな！」ラーンが拳を握りしめると、イシェは眉間に皺を寄せた。「また、あの奇妙な模様か？ ラーン、本当にここが良いって確信があるのか？」
ラーンの指さす壁面には、まるで幾何学的な図形が複雑に絡み合ったように見える模様が刻まれていた。確かに遺跡の壁画などで見かけるものとは違う、どこか不気味な印象を与えるものだった。
「ああ、絶対にここだよ！ 何か感じるんだ！」ラーンは自信満々にそう言うと、早速 pickaxe を手に取り始めた。イシェはため息をつきながら、後ろに控えるテルヘルに視線を向け、「どう思う？」と尋ねた。
テルヘルは鋭い眼差しで壁面を吟味した後、ゆっくりと口を開いた。「興味深い。この模様、どこかで見たことがあるような…」彼女は懐から小さなメモ帳を取り出し、何やら書き込み始めた。
ラーンが熱心に壁を抉り始める中、イシェはテルヘルの行動に疑問を感じていた。なぜ、こんな辺境の遺跡で、あの奇妙な模様に反応するのか。彼女の目的は何なのか？
イシェは、テルヘルが語るヴォルダンへの復讐という物語を本当だと信じようとするよりも、彼女の中に何か別のものを感じていた。まるで、この遺跡、そしてこの模様に秘められた何かを探しているかのような…。
ラーンの pickaxe が壁面に深く食い込むと同時に、不気味な音が響き渡った。壁面から砂埃が舞い上がり、その中から何かが光り始めた。それは、まるで生き物のように脈打つ、不規則な模様の石板だった。
ラーンは目を輝かせ、「やっぱり！ 大穴だ！」と叫び声を上げた。だがイシェは、石板の複雑に絡み合った模様を見て、背筋が凍りつくほどの恐怖を感じた。あの模様は、どこかで見たことがある…そう、テルヘルのメモ帳に書き込まれたものと同じだった。そして、その意味するところは、想像を絶する恐ろしさだった…。