ラーンが巨大な石の扉を勢いよく押し開けた時、埃っぽい空気が彼らの中に渦巻き込んだ。イシェは咳き込みながら、「また、こんな薄暗い遺跡か…」と呟いた。ラーンは笑顔で「今回は違うぞ！俺の直感が言ってるんだ！」と胸を叩く。
テルヘルは二つの焚火の炎を見つめて言った。「この遺跡はヴォルダンが以前調査していたようだ。記録によると、ここには強力な魔力が眠っていると記されている」彼女の目は波間のように揺らめいていた。ラーンは「強力な魔力か！それなら大穴になるかもな！」と目を輝かせた。イシェは眉をひそめた。「ヴォルダンが関与していたとなると、危険すぎるかもしれない」
彼らは遺跡の奥深くへと進んだ。通路は狭く、天井には鋭い岩が突き出ていた。ラーンの足音は重く響き渡り、イシェは静かに後ろから彼を見守った。テルヘルは先頭を歩き、時折壁に手を当てて何かを感じ取っているようだった。
やがて彼らは広大な空間にたどり着いた。天井が高く、中央には巨大な石の祭壇がそびえ立っていた。祭壇の上には、光る青い結晶が置かれていた。
「これが…魔力の源か…」ラーンは息を呑んだ。イシェも思わず近づき、青い結晶に手を伸ばした。その時、地面が激しく揺れ始めた。天井から石が崩れ落ち、壁は波打つように歪んだ。
「これは…！」テルヘルが叫んだ。「ヴォルダンが仕掛けた罠だ！」
ラーンはイシェを引っ張り、「逃げろ！」と叫んだ。三人は慌てて祭壇から離れようとすると、床が割れて巨大な穴が開いた。そこから黒い影がゆっくりと這い上がり、彼らをじっと見つめた。
イシェは恐怖で言葉を失った。ラーンの顔には、初めて見るような真剣な表情が広がっていた。テルヘルは剣を抜き、波間に浮かぶ船のように、静かに立ち向かっていった。