ビレーの夕暮れ時、ラーンの豪快な笑い声が遺跡の入り口からこだました。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の手がけずり出した埃まみれの石板を眺めた。「また無駄な物騒ぎか?」
「いや、今回は違うぞ!見てくれよ、この模様…まるで波紋みたいじゃないか!」ラーンは興奮気味に石板をイシェに見せつけた。確かに奇妙な模様が刻まれていたが、イシェにはただの抽象的な図形にしか見えなかった。「波紋…?そんなものに意味があるわけないだろう」とイシェが言うと、ラーンの顔色が曇った。「おいおい、そう決めつけるなよ!もしかしたら重要な手がかりかもしれないぞ!」
その時、背後から冷たく低い声が響いた。「本当にその通りかもしれません。この遺跡には、過去に起きた出来事の波紋が残されている可能性がある」テルヘルは鋭い視線をラーンに向けながら言った。「そして、その波紋を追うことで、我々が求めるものにもたどり着けるかもしれない」
ラーンの目は輝きを取り戻した。「そうか!やっぱりお前には分かってもらえるな!」と彼は石板を握りしめ、テルヘルの言葉に賛同するかのごとく頷いた。イシェは二人を見つめ、心の中でため息をついた。ラーンの無謀さにいつも振り回されるが、彼の熱意にはどこか惹かれるものがあるのも事実だった。
「よし、じゃあ早速調査だ!」ラーンが石板を片手に遺跡の奥へと進んでいく。イシェはテルヘルに視線を向けると、彼女の鋭い眼光から何かを読み取ったような気がした。「今回は本当に慎重に行動する必要がある」とイシェは心の中で呟き、ラーンの後を追いかけるように遺跡の中へ足を踏み入れた。波紋のように広がる遺跡の奥底には、彼らの運命が待ち受けているのかもしれない…。