ビレーの酒場「波止場」は、いつも喧騒に包まれていた。ラーンはイシェに腕を回し、「今日の成果は？」と声をかけた。イシェはため息をつきながら、小さな袋から埃まみれの石片を取り出した。「またか…こんなもんじゃ、酒もろく一杯買えないわ」
ラーンの顔色が曇る。「そうだな…最近、さっぱりだ」
彼らが住むビレーは、遺跡の宝が眠ると噂される辺境の地。だが、実際には危険ばかりで、大した収穫は得られないことが多かった。特に最近は、ヴォルダンとの国境付近の遺跡は封鎖され、探索できる場所はさらに限られてしまったのだ。
「おい、イシェ、ラーン」
背後から声が聞こえ、二人は振り返った。黒く深い瞳のテルヘルが、テーブルに近づいてきた。彼女は、いつもより少し疲れた様子だった。「今日は、新しい情報を得た。ヴォルダン領に近い遺跡だ。危険だが、大きな報酬が期待できる」
ラーンの顔に再び光が灯った。「おっと、これは promising だな！」
イシェは眉間に皺を寄せた。「テルヘル、またそんな危険な場所へ？あの辺りはヴォルダンの監視が厳重だろう」
「大丈夫だ。私は手配をしている。安全なルートで侵入できる」テルヘルは、自信に満ちた声で言った。「今回の遺跡は、かつてヴォルダンが支配していた時代のもので、多くの秘密を秘めている。そこには、お前たちが望む『大穴』があるかもしれない…」
彼女の言葉に、ラーンの心は波涛のようにざわついた。イシェはテルヘルの計画を疑うように見つめたが、ラーンの決意はすでに固まっていた。
「よし、行くぞ！」