ビレーの酒場「荒くれ者」が今日も賑わいを見せていた。ラーンが豪快に笑うたびに、イシェは眉間にしわを寄せ、テルヘルは冷ややかな視線を送っていた。
「おい、イシェ!もう一杯やるか?今日は祝杯だぞ!」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。「祝杯?何の祝杯だ?また遺跡からつまらない石を拾ってきただけだろう?」
「つまらない?いやいや、これは古代文明の神秘を秘めた石ですよ!いつか大金になるかもしれませんよ!」
ラーンの目を輝かせる姿を見て、イシェは諦めたように肩を落とした。テルヘルは静かに酒を傾けながら、二人のやり取りを冷静に見つめていた。
「今日は、少し話をしたいことがある」
テルヘルの言葉に、ラーンとイシェは揃って顔を上げた。
「実は、新しい遺跡の情報を入手したんだ。ヴォルダンとの国境に近い場所にあるという。そこには、かつての王家の墓が眠っているかもしれない」
「王家の墓!?すごいぞ、テルヘル!今回は大穴を開けるぞ!」
ラーンの興奮に比べて、イシェは不安な表情を浮かべた。「でも、ヴォルダンとの国境に近い場所って…危険じゃないのか?」
「危険なのは承知の上だ。しかし、そのリスクに見合うだけの価値がある」テルヘルは氷のような眼差しで言った。「あの墓には、ヴォルダンを滅ぼすための鍵が眠っているかもしれない」
ラーンの目はさらに輝きを増し、イシェの不安は募るばかりだった。
「よし!行くぞ、イシェ!」
ラーンは立ち上がり、イシェの手を取ろうとした。だが、イシェは一歩後ずさった。
「ちょっと待てよ、ラーン。今回は様子がおかしい…何かあるんじゃないか?」
その瞬間、酒場のドアが開き、黒装束の男たちが押し入ってきた。彼らは鋭い目をした男たちに囲まれ、剣を抜きながらゆっくりとテーブルに近づいてきた。