「よし、今日はあの崩れかけた塔だ!」ラーンが拳を握りしめた。イシェは眉間に皺を寄せながら地図を広げた。「あの塔は危険だって言っただろう。法規違反の区域だし、ヴォルダン軍が以前調査してたって噂があった」
「そんなの気にすんな!」ラーンは陽気に笑った。「大穴が見つかるかもって思うとワクワクするだろ?それに、テルヘルさんがいい報酬を払うって言ってたんだろ?」イシェはため息をつきながら地図をしまった。「わかった、行くけど、何かあったら責任は取らないよ」
ビレーの街を出ると、すぐに険しい山道になった。遺跡探しの許可を得ていても、危険区域への立ち入りには厳格な法規が適用された。ヴォルダンとの国境に近いこの地域では特に厳しかった。
崩れかけた塔は、まるで巨大な爪のように空に向かって突き立っていた。周りには、かつての建造物だったと思われる石畳が散らばっているだけで、今は荒れ果てた風景が広がっていた。
「ここに入る前に念のため確認する」テルヘルが低い声で言った。「法規に抵触する遺物が出てきた場合は持ち帰らない。持ち出しは厳禁だ。ヴォルダンに目をつけられる可能性もある」
ラーンはうなずいた。「わかった。大穴が見つかったら、みんなで分けようぜ!」イシェはテルヘルに鋭い視線を向け、「本当に大丈夫なのか?」と問いかけたが、テルヘルは jawaban を避けて塔の中へと足を踏み入れた。
塔の中は薄暗く、埃っぽかった。崩れかけた壁には、かつての栄華を物語る彫刻の残骸があった。ラーンは興奮気味に剣を振るいながら進んでいったが、イシェは慎重に足取りを確かめながら後を追った。テルヘルは二人よりもずっと冷静で、周囲を警戒しながら進んでいた。
すると、塔の一室で異変を感じた。
「何かある…」イシェの声が震えた。ラーンの呼吸も荒くなっていた。テルヘルは静かに剣を抜いた。その瞬間、床板が崩れ、深い闇へと落ちていくのを感じた。