「よし、今回はここだな」
ラーンが指さすのは、崩れかけた石柱がむき出しになった、草木が生い茂る遺跡の入り口だった。イシェは眉間に皺を寄せた。
「またこんな危険な場所? ここは以前から見ているように見えるけど…」
「大丈夫だ、イシェ! 今回は何か感じるんだ。きっと大穴がある!」
ラーンの自信に満ちた言葉に、イシェはため息をついた。彼の楽観的な性格にはいつも振り回される。だが、テルヘルはラーンの目をじっと見つめていた。
「いいだろう。この遺跡には興味深いものがあると感じる。ラーン、お前が言うように、何かあるかもしれない」
テルヘルの言葉にラーンはニヤリと笑った。イシェはテルヘルの真意を測りかねた。彼女はいつも冷静沈着で、目的のためなら手段を選ばない。一体何を探しているのか?
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。石畳は崩れ落ちており、足元が不安定だった。イシェは慎重に進むと、ラーンとテルヘルに続くようにした。
「何かあったか?」
ラーンの声に振り返ると、彼は崩れた壁を指さしていた。壁には複雑な文様が刻まれており、一部が欠落している。
「これは…!」
イシェの視線が壁の文様から、床にある小さな水晶の瓶に移った。瓶の中には青白い液体が満たされており、かすかに光を放っている。
「これは…」
ラーンは瓶を拾い上げると、テルヘルに差し出した。彼女は慎重に瓶を受け取り、内容物を観察した。
「これは治癒の薬でしょうか?」
テルヘルの言葉にイシェも驚いた。伝説によると、この遺跡には強力な治癒能力を持つ薬が眠っているという噂があった。だが、それは単なる作り話だと思われていた。
「まさか…本当に?」
ラーンの表情は興奮で輝いていた。イシェは彼とは対照的に、冷静に状況を判断しようと努めた。しかし、この瓶が本当に治癒の薬であれば、これは大きな発見になる。
「では、誰に使いますか?」
テルヘルは瓶を握りしめながら言った。その目は、ラーンとイシェに向けられていた。
「誰にでも使えるものではありません。目的のために使うべきです」