ラーンが、石化した巨人の腕を叩いて笑った。「やっぱり大穴だな!イシェ、見てろよ!今回は必ず金貨の山が見つかる!」
イシェは眉間にしわを寄せながら、巨大な遺跡の内部を見回した。薄暗い空間に伸びる漆黒の通路は、まるで巨大な獣の口を開けているように見えた。「ラーン、そんな大げさな…ここは以前から調査済みじゃないか?地図にも何も記されてないぞ。」
「だが、イシェ!あの地図は古いんだろ?もしかしたら、新しい部屋が見つかるかもしれない!」ラーンの瞳は興奮で輝いていた。彼は巨大な剣を肩に担ぎ、遺跡の奥へ進んでいった。
テルヘルが彼らを追いかけてきた。「待ってください。私はこの遺跡の調査結果を精査しました。ここには何も…」彼女の言葉はラーンの背中に届かなかった。
イシェはため息をつき、テルヘルに歩み寄った。「何か見つかったら必ずあなたにも知らせますから。」
テルヘルは冷めた表情で頷いた。「私はその約束を信じているわ。しかし、無駄な探索には時間を費やさないでほしい。」彼女は目を細め、ラーンの背中に視線を向けた。「彼の無謀さは、いつか私たち全員を危険に晒す。」
遺跡の奥深くでは、ラーンが壁を叩いて笑っていた。「ほら!何か音がするぞ!これは大穴だ!」彼は興奮した様子で、壁の隙間から覗き込んだ。
イシェはテルヘルに視線を向け、「何かあったらすぐに知らせて」とささやいた。二人は互いに頷き合った。
ラーンの叫びが響き渡った。「見つけた!宝箱だ!」
しかし、その瞬間、地面が激しく揺れた。天井から石が崩れ落ちてきた。ラーンは慌てて後ずさりをし、イシェとテルヘルに助けを求めた。
「これは…罠だ!」イシェは叫んだ。
三人は必死に崩れ落ちる遺跡から逃げ出した。出口付近では、すでに rubble が山積みにされていた。
ラーンの顔色は蒼白だった。「あの宝箱…あれは罠だったのか…」
テルヘルが彼をじっと見つめた。「この遺跡の調査費用は、あなたに課せられた借金の一部です。今回の失敗は、あなたの責任だ。」彼女は冷たく言った。「次の探索では、慎重さを忘れずに。」
ラーンの顔から血の気が引いた。「わかった…。」
イシェはテルヘルの言葉を聞いて、何かを察したように頷いた。彼らは遺跡から脱出した後、近くの酒場で疲れを癒すことにした。
「あの宝箱は一体何だったんだろう…」ラーンがぼやく。
イシェは静かに言った。「それはもう関係ないよ。重要なのは、私たちは無事に生還できたことだ。」
テルヘルはテーブルに置かれた酒のグラスを握りしめた。「そして、今回の失敗から学び、次に繋げなければいけないということだ。」彼女の目は冷たかったが、どこかで燃えるような意志を感じさせるものがあった。
「次の探索では、より慎重に行動する必要があるだろう。そして、今回の失敗を償うために、さらに多くの遺跡を探検しなければならない。」
ラーンの心は重くなった。彼は自分の無謀さが、仲間たちを危険にさらしたことを痛感していた。
イシェはラーンの様子を察して、肩に手を置いた。「気にしすぎないでよ、ラーン。私たちはチームだ。これからも一緒に頑張ろう。」
ラーンの胸が少し熱くなるのを感じた。「ありがとう、イシェ。」
テルヘルは立ち上がり、テーブルから離れた。「私は今夜はもう帰る。次の探索について考えなければならない。」彼女はラーンとイシェを見つめ、「今回の失敗を繰り返さないように。」と言い残し、酒場から出て行った。
ラーンの視線は、彼女の後ろ姿を追いかけた。彼は、テルヘルが自分たちの未来に大きな影響を与えると確信していた。そして、自分たちがこれから直面する試練の大きさを痛感した。