ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑っていた。イシェは眉間に皺を寄せていた。「またあの話か」と溜息をつき、「そんな大穴なんて、本当にあるのかよ」と呟いた。ラーンの夢物語はいつも同じだった。遺跡から掘り当てた莫大な財宝で、ビレーの人々に富をもたらすという壮大な計画だ。
「あるに決まってるだろう！」ラーンはテーブルを叩き、「いつか必ず見つけるさ、イシェも信じろよ！」と目を輝かせた。イシェは彼の熱意には心を動かされる部分もあったが、現実的な頭脳がそれをすぐに否定した。「そんな甘い話があるわけない」と呟いた。
その時、扉が開き、テルヘルが入ってきた。彼女は黒曜石のように深い瞳で、ラーンたちを見据えた。「準備はいいか？」彼女の口調は冷たかった。ラーンは立ち上がり、「いつでも行くぞ！」と意気揚々と答えた。イシェも仕方なく立ち上がった。
「今日はあの遺跡だ」テルヘルは地図を広げ、指を動かした。「以前から調査しているが、強力な魔物が徘徊しているという話だ。注意が必要だ」ラーンはワクワクした表情で頷いた。「魔物か！いいぞ、それなら戦える！」と拳を握りしめた。イシェはテルヘルの冷静な指示を聞きながら、内心不安を感じていた。
遺跡の入り口に立つと、不気味な空気が漂っていた。ラーンは剣を構え、「行くぞ！」と叫び、遺跡へと足を踏み入れた。イシェは後ろから彼を見つめ、静かに呟いた。「どうか…無事に戻って来い」と。
遺跡内部は暗く湿っており、奇妙な音がこだました。ラーンは意気揚々と進むが、イシェは慎重に周囲を警戒しながら歩いた。テルヘルは先頭を歩き、地図を確認しながら進んでいった。
突然、壁から巨大な影が飛び出した！ラーンの剣が光り、魔物と激突した。激しい戦いが始まった。イシェは弓矢で援護し、テルヘルは魔法で魔物を攻撃した。
激しい戦いの末、ついに魔物は倒れた。しかし、その場に立ち尽くす3人を見下ろすように、もう一つの影が壁から現れた。それは、より大きな魔物だった。ラーンとイシェは息を呑んだ。テルヘルは冷静に状況を判断し、「逃げるぞ！」と叫び、3人は遺跡から一目散に逃げ出した。
洞窟の入り口まで走り着いた時、イシェが振り返った。巨大な魔物は彼らを追いかけてくることはなかった。テルヘルは深呼吸し、「今回は運が良かった」と呟いた。ラーンは肩を落とし、「Damn…」と呟いた。イシェは深く息を吸い込み、静かに言った。「次はどうする？」
テルヘルは地図を見つめ、「次の目標は…」と呟き始めた。その目は冷たく、そしてどこか決意に満ちていた。