ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑い声を上げている。イシェは眉間に皺を寄せながら、ラーンの肩を叩き「また無駄遣いするな」と叱りつける。ラーンの視線は、テーブルの上の空になった酒樽から離れず、「大穴」を見つけた時こそ、こんな贅沢もしたいと言い張る。イシェはため息をつき、ラーンを説得しようとするが、その背後から冷たい声が響いた。「そろそろ出撃の準備だ」。テルヘルが静かにテーブルに近づき、二人に告げた。
今日の遺跡は、ビレーから馬で一日の距離にあるという、ヴォルダンとの国境に近い場所だ。テルヘルは詳しい説明を避けるように、「危険な遺跡だが報酬も高額だ」とだけ告げ、ラーンとイシェの目を鋭く見つめた。イシェは不安を感じながらも、テルヘルの言葉の裏に何かがあるのではないかと疑い始めた。
遺跡に着くと、テルヘルが用意した地図を広げた。その地図には、遺跡の構造だけでなく、罠や危険な場所も詳細に記されている。イシェは驚愕する。こんな情報を入手するには莫大な費用が必要だ。一体テルヘルはどこから資金を得ているのか?
「この地図を手に入れるために、私は多くの犠牲を払った」テルヘルの言葉は冷酷だが、どこか悲しげだった。「ヴォルダンに奪われたものを取り戻すためだ」。イシェはテルヘルの言葉を聞いて、彼女の復讐心の深さと、その裏にある深い悲しみを感じた。
遺跡探索が始まると、ラーンはいつものように軽快に動き回り、イシェは冷静に状況を判断しながら進んだ。テルヘルは二人を先導し、時折鋭い洞察で罠を回避する。しかし、遺跡の中心部には予想外の難関が待ち受けていた。
そこには、ヴォルダン軍の紋章が刻まれた扉があった。イシェが扉に手を触れると、背後からテルヘルが声を張り上げる。「これはヴォルダンの罠だ! 」扉の奥には、ヴォルダン軍が遺跡を調査している様子が映し出された。
「一体どうなっているんだ?」ラーンは戸惑い、イシェはテルヘルの意図を理解しようと頭を悩ませた。テルヘルは冷静に状況を分析しながら、「この遺跡はヴォルダンが狙っていたのだ」と告げた。「そして私は、彼らが何を探しているのかを知りたい」。
イシェは、テルヘルの目的が復讐だけではないことに気づき始める。彼女は何か別のもの、もっと大きなものを目指しているのではないか? そしてそのために、彼女はどんな手段も厭わないのだろうか?
その時、ラーンの背後から不気味な音が響いた。ヴォルダン軍が遺跡に侵入してきたのだ。イシェはラーンの肩を叩き、「逃げよう!」と叫んだ。ラーンは一瞬戸惑うが、すぐにテルヘルの言葉に従い、イシェと共に遺跡から脱出を開始した。
しかし、出口はすでにヴォルダン軍によって封鎖されていた。彼らは逃げ道を断たれ、絶体絶命のピンチに陥った。その瞬間、テルヘルが奇妙な笑みを浮かべて言った。「これで終わりだ」と。イシェは彼女の言葉の意味を理解することができなかったが、ラーンの顔色が急に青ざめるのを感じた。
その時、イシェは気がついた。テルヘルが遺跡を調査する目的は、ヴォルダン軍の情報を得ることではなく、彼らをここで罠にかけることだったのではないか? そして、この遺跡の真の目的、それは...。