ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑った。「また大穴だ！今回は必ずだ！」テーブルを叩きつけると、イシェは眉間に皺を寄せた。
「ラーンの言う大穴ってのは、いつもと同じく空っぽの壺だな」と呟くと、ラーンは不機嫌な顔をした。「そんなこと言わないでくれよ、イシェ。いつか必ず掘り当てられるさ！ほら、テルヘルさんもそう信じてくれてるだろ？」
テルヘルは静かに酒を口に運んでいた。彼女の瞳には、いつもどこか冷たい光が宿っている。ラーンとイシェとは違い、彼女は目的意識が強く、遺跡探索は単なる手段に過ぎない。ヴォルダンへの復讐を果たすための資金調達だ。
「いいだろう」とテルヘルが口を開くと、ラーンの顔色が明るくなった。「今日は特に危険な遺跡だ。だが、報酬も高い。準備は出来ているか？」ラーンとイシェは頷き合った。テルヘルは地図を広げると、赤い線で示した場所を指さした。「ここだ。かつてヴォルダンが支配していた時代には、この遺跡は禁断の地として恐れられていた」
「禁断の地？何が怖いんだ？」とラーンの口から出た言葉に、テルヘルは冷めた笑みを浮かべた。「噂によると、そこは汚れた Macht（魔力）で満たされている。触れるもの全てを腐らせると言う」
イシェは不安な表情を見せたが、ラーンは意気揚々と立ち上がった。「怖くなんかないよ！俺たちは最強の遺跡探索者だ！」と胸を張るラーンの姿に、テルヘルは複雑な感情を抱いた。彼らにはまだ知らないことがある。ヴォルダンが隠した真実、そしてその先に待ち受ける絶望的な未来。彼女は小さくため息をつき、三人が遺跡へと向かう背中に視線を注いだ。汚れた Machtが放つ悪臭は、すでに彼らの運命を蝕んでいた。