ビレーの酒場に、いつものように騒がしい笑い声が響いていた。ラーンがイシェの肩を叩き、「おい、今日は大穴が見つかる予感がするぜ！ほら、テルヘルも言ってるだろう？」と目を輝かせた。
イシェはため息をついた。「またそんなこと言うなよ。テルヘルは遺跡の調査結果から、今回は特に有望な遺物があると言ってただけだ。」
「そうか！」ラーンの笑顔はさらに広がった。「有望ならいいんだ！きっと大金になるぞ！」
テルヘルは眉をひそめてテーブルに置かれた地図を見つめていた。彼女の瞳には、復讐の炎が燃えていた。「この遺跡はヴォルダンの侵略で失われた歴史と深く関わっている。そこに眠る遺物は、彼らへの報復の鍵となるはずだ。」
ラーンは地図を指差した。「よし、ここだな！あの洞窟だ！」
イシェが心配そうに言った。「あの洞窟は危険だって聞いたことがあるぞ。以前、別の探検隊が行った時、崩落事故で…」
「大丈夫、大丈夫！俺たちが行くなら問題ないさ！」ラーンは自信満々に笑った。
テルヘルは立ち上がった。「準備だ。今回は特に慎重に進もう。」
遺跡の入り口に近づくにつれて、空気が重くなった。かつて氾濫した川の跡が、荒れ果てた地を刻んでいた。洞窟の入り口は崩れた岩で塞がれていた。ラーンが剣を抜き、力任せに岩を砕き始めた。
「待て！」イシェが叫んだ。「あの崩落事故の原因は、地下水脈のせいであった可能性が高い。もしかしたら、今にも…」
その時だった。洞窟の奥から轟音と共に水が噴出してきた。ラーンの足元が崩れ、彼は深淵に吸い込まれていくように落下した。
「ラーン！」イシェとテルヘルは声を張り上げた。しかし、ラーンの姿はすでに闇の中に消えていた。
イシェは恐怖で体が震え上がった。「あの…あの洞窟は、氾濫の危険性があったのか…」
テルヘルは冷静に状況を判断した。「今すぐ助けに行かなければ！だが、安全な方法を見つけなければ…」
彼女の瞳には、復讐心だけでなく、ラーンへの友情が燃えていた。