ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑う。イシェは眉間にしわを寄せながら彼の背後から彼に詰め寄るように言った。「また無駄な金を使ったじゃないか！あの酒場で何時間も歌なんて聞いている暇があるなら遺跡の調査をしてくるべきだ」
ラーンの顔には少しだけ赤みがさっていた。「いや、でもイシェよ。たまには気分転換も必要だろ？それにあの歌、すごく感動的だったんだぜ！」 ラーンは力強く胸を叩くが、イシェの鋭い視線にすぐに言葉を失った。
「いい加減にしてくれ！次の仕事で稼いだ金は、あの氷結した洞窟への調査に使わなくちゃいけないのに」イシェは疲れ切った様子で言った。「テルヘルが言ったように、あれは危険な場所だ。準備が不十分だと命を落とすぞ」
ラーンはイシェの言葉を無視して、酒をぐいっと飲み干した。「大丈夫だ、イシェ。俺たちは最強のチームだろ？それに、あの洞窟にはきっと大穴があるはずだ！あの氷柱の輝きは、まるで宝石のようだったぜ！」
イシェはため息をつきながら、ラーンの肩を叩いた。「そうだな、ラーン。お前がそう信じるなら仕方ない」だが、彼女の目はどこか悲しげに光っていた。
その夜、イシェは寝床に入る前に、テルヘルから渡された古い地図を広げた。氷結した洞窟の入り口付近には、奇妙な記号が刻まれていた。「これは一体…」イシェは地図をじっと見つめながら呟いた。その記号はどこかで見たことがあるような気がした。だが、思い出せない。
次の日、ラーンとイシェはテルヘルと共に氷結した洞窟へと向かった。入口付近には、凍てつく風が吹き荒れており、足元には厚い氷が張り付いていた。「ここだ」テルヘルは氷柱に似た鋭い岩を指差した。洞窟の入り口は、まるで巨大な口を開けた獣のようだった。
ラーンは剣を抜き、意を決したように言った。「よし、行こう！大穴を見つけ出すぞ！」イシェはラーンの後ろから続くが、彼女の心には不安が渦巻いていた。氷結した洞窟の奥深くで、何か邪悪なものが眠っているような気がしたのだ。