冷たい風がビレーの街を吹き抜ける。ラーンはイシェの眉間に刻まれた皺を見つめていた。「またこんな顔か?」とラーンの言葉にイシェはため息をついた。「テルヘルが言うには、今回は本当に大物らしいぞ。氷柱の遺跡だと言っていた」
「氷柱の遺跡って…」ラーンは言葉を失った。彼は、かつて祖父から聞いた話を思い出した。氷河期に凍りついた巨大な洞窟で、そこには古代文明の遺物が眠っていると…。
「あの遺跡は危険だって聞いたことがあるよ」イシェは冷静に言った。「地図にさえ載ってないし、ヴォルダン軍が調査しようとした隊も全滅したって…」
ラーンの目は輝いていた。「そんな危険な場所こそ、大穴があるんじゃないか!」
イシェはため息をついた。ラーンの楽観主義は、いつも彼女を悩ませる。だが、彼と一緒にいると、なぜか安心できるものがあった。
テルヘルは、いつものように冷たい視線で二人を見下ろした。「準備はいいか?氷柱の遺跡へ出発だ」
三人はビレーの外れにある森に入っていった。森は凍え渡り、足元の地面には霜が降り積もっていた。空から冷たい雨が降り始め、すぐに雪に変わり始めた。
「やっぱり寒いな…」ラーンの歯がカチカチと音がした。イシェは彼を心配そうに but 言葉をかける。テルヘルは黙々と歩を進める。
やがて森を抜けた先には、巨大な氷の壁が現れた。壁はまるで巨大な氷柱のようにそびえ立ち、その頂上は雲に隠されていた。
「これが…氷柱の遺跡か…」イシェの声は震えていた。ラーンは目を輝かせながら氷の壁を見つめていた。「ついに来たぞ!」彼は剣を手に取り、遺跡へと続く入り口を探し始めた。