冷たい風がビレーの街を吹き抜けた。ラーンは肩をすくめ、イシェとテルヘルが待つ小さな酒場に駆け込んだ。凍えるような外気温とは対照的に、店内は暖炉の火で温かく、活気に満ちていた。
「遅かったな、ラーン」テルヘルが鋭い目で彼を睨みつける。「遺跡から戻ってきたばかりなら、まだ温かいはずだぞ」
ラーンの頬は赤く染まっていた。酒場の入り口から吹き込む冷たい風でそうなのか、それとも何か別の理由かは分からなかった。
「ちょっと寄り道があったんだ」とラーンは言い訳した。イシェは視線をそらしながら、「今日は特に収穫はなかったみたいだな」と静かに言った。
「そうだな」ラーンがテーブルに崩れ落ちた。「遺跡の奥深くまで進めたけど、結局何も見つからなかった。あの氷柱が邪魔で…」
テルヘルは眉をひそめた。「氷柱か…またか」。彼女は酒場のマスターに一杯のワインと、ラーンのために温かい湯を頼んだ。
「あの遺跡には、氷の呪いがあると聞いたことがある」イシェが言った。「かつてそこに住んでいた人々が、何者かに襲われ、その恨みが氷となって残ったという噂だ」
「そんな馬鹿な話はないだろう」ラーンはそう言いながらも、顔色が少し変わった。
テルヘルはラーンの様子をじっと見つめ、「呪い」という言葉に何かを感じ取ったようだった。彼女の瞳には、氷のように冷たい光が宿っていた。