ラーンが巨大な石の扉を押し開けると、埃っぽい空気が彼らを襲った。イシェは鼻をつまんで「またあの臭い…」と呟いた。扉の先は広大な地下空間だった。天井から垂れ下がった鍾乳石が不規則な影を落とし、まるで巨大な迷宮のようだった。
「ここ…どこだ？」ラーンの声にエコーがかかり、薄暗い空間に響き渡る。テルヘルは小さなランプを点けて地面に置くと、古びた地図を広げた。「ここが遺跡の核心部だ。伝説の『水の鏡』がある場所だ」と彼女は言った。
イシェは地図を指差した。「この水面に映るものは…？」
「未来を予見すると言われている」テルヘルは冷たく微笑んだ。「だが、その力を手に入れるには危険な試練が待っている」
ラーンの瞳が輝いた。「試練か！面白そうだ！」
イシェは不安げに言った。「ラーン、落ち着いて。この遺跡はいつもと違う…何か不気味だ」
しかしラーンの耳には届かなかった。彼はすでに興奮した様子で、水面へと歩み寄っていた。水面は静かで、まるで鏡のように周囲を映し出していた。そこにラーンの姿がゆらめき、歪んでいく。その瞬間、水面に小さな波紋が広がり、ラーンの足元から水が湧き上がってきた。
「うわっ！」ラーンがよろめくと、イシェが駆け寄って支えた。「大丈夫か？」
「ああ…何だったんだ？急に水が…」ラーンは水滴を払うように手を振った。「何かおかしいぞ…」
テルヘルは冷静に状況を見つめていた。「水面…何か変化している」
その時、水面から奇妙な光が立ち上り、空間に広がっていった。イシェは目を細めた。「これは…」
光が収まると、そこには巨大な影があった。それは水面に映ったラーンの姿ではなく、何か別のものだった。その影はゆっくりと動き始め、ラーンに向かって迫ってきた。