ラーンの粗雑な一撃が埃を巻き上げ、奥の部屋に響いた。イシェはため息をつきながら、崩れた壁の隙間から差し込む薄暗い光を確かめた。「またしても大したものはなかったようね。本当にここで大穴が見つかるのかしら」
「まだ諦めるのは早いぞ!」ラーンは意気揚々と剣を振りかざし、部屋の中をくまなく探す。「ほら、この奇妙な模様、もしかしたら何かの手がかりじゃないか?」
イシェは彼の熱心に目を細めた。確かに壁に刻まれた幾何学的な模様は不自然なものだった。しかし、単なる装飾品のように思えた。「ラーン、それって遺跡の壁によくあるものでしょう? 以前にも見たような…」
その時、テルヘルが突然動きを止めた。「待て。」彼女の視線は床に向けられていた。「何か感じるものがある。」
イシェとラーンの視線も床へと向けられた。そこには、石畳の隙間からわずかに水が滲み出ているのが見えた。「水脈か…」テルヘルは呟いた。「遺跡の構造を考えると、この水脈は地下深くまで続いている可能性が高い。もしかしたら、大穴への道標なのかもしれない。」
ラーンの顔色が明るくなった。「よし!水脈を追って進めばいいんだな!」彼は早速剣を地面に突き立て、水の流れを辿るように歩き始めた。イシェはため息をつきながら、彼についていくことにした。テルヘルは静かに後ろから二人を見つめていた。彼女の目は、水の流れだけでなく、ラーンの背中に宿る希望と、その希望が招くかもしれない危険を注視していた。