「よし、ここだ!」ラーンが声を上げると、イシェはため息をついた。「また、そんな曖昧な場所?」
ラーンの指さす方向には、ただの茂みと苔むした石が散らばるだけの場所が広がっていた。イシェの視線は、その奥に広がる水たまりへと向いた。まるで鏡のように空を映し出す静かな水面。そこに映り込むラーンの姿は、どこか不気味に歪んでいた。
「ここなら何かあるって、確信があるんだ!」とラーンは言いながらも、イシェの視線を感じると少し自信なさげな表情になった。「だってさ、ほら、あの水たまり。深いんだよ。もしかしたら、遺跡の入り口が隠れてるんじゃないか?」
イシェは諦めたように頷いた。「わかったわかった。探してみるわ」
テルヘルは両腕を組んで、二人を見下ろすように立っていた。「時間がない。早く調査を終えなければ。」彼女の目は鋭く、水たまりに映るラーンの姿が一瞬ゆらぐのを見逃さなかった。
「よし、じゃあ俺たちが先に潜って確かめてみるか!」ラーンはワクワクした様子で、イシェを引っ張った。イシェは仕方なく、彼に付き合った。
水たまりの近くまで来ると、冷たい湿気が二人を包み込んだ。イシェは不吉な予感を感じた。この場所には何か、見えない力があるような気がしたのだ。
ラーンが茂みを切り開いて進むと、そこには小さな石の階段が現れた。階段の下には、漆黒の闇が広がっていた。
「ほら、あった!遺跡だ!」ラーンの声は興奮気味だった。
イシェは階段に足を踏み入れようとした瞬間、背後からテルヘルの声が聞こえた。「待て」
テルヘルはゆっくりと歩き出し、水たまりの水面に近づいた。彼女は水面をじっと見つめ、何かを感じ取ったのか、少しの間静かに佇んでいた。そして、ゆっくりと口を開いた。
「ここには、何かがいる」