ラーンが剣を抜き放つ音が、埃っぽい遺跡の空気を切り裂いた。巨大な石扉の前に立ちはだかるゴーレムの体から、砕けた石片が雨のように降り注いだ。イシェは素早く身をかわし、背後から飛び出したゴーレムの腕を鋭い短剣で切りつけた。
「ラーン、あの石柱に何かあるぞ！」
イシェの声に気を取られたラーンの隙を突いて、ゴーレムは巨体を振り下ろした。ラーンは剣で受け止めようとしたが、その衝撃でよろめき、壁に激突した。
「くそっ！」
イシェがゴーレムの足首を攻撃しようと躍り上がろうとしたその時、轟音が響き渡った。石柱の頂上から、まるで怒りの炎のように赤い光が噴出した。その光はゴーレムを包み込み、石像を溶かすように崩し去った。
「何だこれは…」イシェは目を丸くした。ラーンの顔も驚きに満ちていた。突然の事態に戸惑う二人を見つめるかのように、赤い光は空に向かって消え去った。
すると、石柱から滑らかな金属板が現れた。その表面には複雑な模様が刻まれており、まるで古代の地図のようだった。イシェが慎重に金属板に触れると、それはゆっくりと回転し始めた。そして、その回転に合わせて、壁一面に隠されていた文字が浮かび上がった。
「これは…？」イシェは声も詰まった。壁には、かつてこの遺跡を築いた人々の歴史、そしてその末路が記されていた。それは、ヴォルダン帝国の侵略、民衆の苦悩、そして最後に希望を託した伝説の遺物について語っていた。
ラーンとイシェは互いの目を合わせた。彼らは偶然にも、歴史の歯車に巻き込まれ始めたことを悟った。この遺跡には、単なる財宝以上のものがあったのだ。