「おい、イシェ！あの石碑、どうだ？もしかしたら古代の地図とか書かれてるんじゃないか？」ラーンが興奮気味に石碑を指差した。イシェは眉間にしわを寄せて、石碑を慎重に観察した。「何にも書いてないよ、ラーン。また妄想したんじゃないか？」「いやいや、よく見てみろ！ほら、あの模様、ちょっと見覚えあるだろ？あいつに似てる！」ラーンの指が示すのは、まるで歪んだ獣の顔のような模様だった。イシェはため息をつきながら、石碑をもう一度じっくりと見つめた。確かに、どこかで見たような気がした。
「まあ、ありえない話でもないか…」イシェが呟くと、ラーンは喜び勇んで言った。「よし！これで大穴確定だ！宝の山だ！」イシェは苦笑しながら、ラーンの背中に手を置いた。「ちょっと待った。まだ何も分かってないよ。この遺跡は危険な場所だって分かってるだろう？」「大丈夫、イシェがいてくれればなんとかなるさ！」ラーンは自信満々に笑って言った。しかし、イシェの顔には少し影が落ちていた。最近、ビレー周辺では、遺跡探索でなくなった冒険者たちの噂が広まっていたからだ。民衆の間では不安が広がりつつある。
「よし、行くぞ！イシェ、テルヘル、準備はいいか？」ラーンが石碑に背を向けると、イシェは小さく頷いた。テルヘルは冷静な顔つきで、「準備万端です」と答えた。三人は遺跡の入り口へと足を踏み入れた。その奥には、まだ誰も見たことのない世界が広がっているのかもしれない。しかし、同時に、そこに待ち受けている危険もまた想像を絶するほどのものだった。
「この遺跡は、一体何なんだ…」イシェは背筋に冷たいものが走ったように感じた。民衆の不安は、単なる噂ではないのかもしれない。